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それは違う!

chigau.jpg それは違う!
文藝春秋 文春文庫

『「買ってはいけない」は嘘である』全編+新たに3章分を加えたものです。  第61回 文藝春秋読者賞受賞。
定価:524円(税別)
絶版ですが、当サイトで発売中 在庫僅少!

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目次

第1章 『買ってはいけない』はインチキ本だ
この本のどこか「科学的」で「医学的」なのか。/『買ってはいけない』を信じてはいけない。
参考 疑わしきものを薦めるのですか?(『買ってはいけない』共著者・渡辺雄二)

第2章 もう一度言う『買ってはいけない』はインチキ本だ
まだまだあるウソ、捏造、歪曲の動かぬ証拠。/これでも「インチキ本ではない」と言い張るのか

第3章 「環境ホルモンで精子激減」の奇々怪々
「精子減少」すら実証されていなかった!/これまた人を不安に陥れる狼少年ジャーナリズムの好例

第4章 ダイオキシン猛毒説の虚構
母乳が危ない、焚火をやめろ、子どもを生むな。/根拠なきアジテーションこそ問題だ

第5章 運動と環境とジャーナリズム
現代という時代を理解しない恫喝運動の行き着く先は、無責任な「禁止の地雷地帯」

第6章 「人権大国」日本の迷走
オウム信者に対してならば法を犯しても良いのか。/度過ぎた「ゴネ得」思想はブーメランのごとく

第7章 暴走する「人権」に鉄槌を
自由=わがまま、平等=抜け駆け禁止...。/対談 八木秀次・高崎経済大学助教授

第8章 諸先輩からの罵詈雑言集
自分への悪口の記録に留めるつもりが、いつの間にか反駁に、ついつい力が入って



その話、ホントかぁ!?
世間に流布する正義や常識を疑え。



『買ってはいけない』は実名で各種商品を槍玉にあげ二百万部のベストセラーに。しかし冷静に検証すればウソ、誇張、ねじまげ、詐欺的文章のオンパレードなのだ。著者は、環境ホルモン、ダイオキシン問題など、根拠の乏しい説があたかも常識の如く流される風潮を徹底的に論破。世の常識のズレに激しく迫る。
≪あとがき≫

 一般的にいって文庫(今あなたが手にとっているサイズ)には、単行本(文庫や新書より大きいやつ)をそのまま文庫にして解説をつけたものと、書き下ろしとがあります。本書『それは違う!』は、一般的なあり方とは異なっており、単行本『「買ってはいけない」は嘘である』の全章を収録したうえで、新たに三つの章を付加しました。
 サービス精神が旺盛だ、と思ってもらえると、すごく嬉しいわけです。裏返せば、私の本としては二番目にたくさん売れた『「買ってはいけない」は嘘である』の購読者が、再び本書を買われても損をしないように、と願った結果でもあります。
 さて、つい先日のことです。何冊もベストセラーを書いている同世代の科学者と話していたとき、その方はみな書き下ろしで単行本を出しておられたので、そのことを称えたところ、「書き下ろしって何ですか?」と聞かれてしまい、小さな戸惑いを隠しつつ説明申し上げました。最初から最後まで、その本のために書いた場合に「書き下ろし」といいます。これも業界用語の一種なのだなあ、と思った反省から、冒頭に書いた「文庫」や「単行本」にも( )を補ったのでした。
 ただし業界用語は、広く言葉が普及してゆく源泉でもあります。「ノンブル(フランス語で、ページ数を示す番号そのもの。「写真ページではノンブルを隠す」などと使う)」は業界内でしか通じなくても困らないが、「ページ」を知らないと小学生でも困る。
 実は、科学を装った〝啓蒙書〟の場合にも、混乱が生じるのはこのようなことに起因するのです。科学的な業界用語が鏤(ちりば)められた『買ってはいけない』は、結果的に二百万部を超えるベストセラーとなりました。おめでとうございます。私の批判を読んでから買いに走った方も多いそうなので、同書を鵜呑みにした読者は意外に少なかったかもしれません。が、ともかく昨今、論争が成り立ちにくいのは、専門用語が多くなりすぎて、一つ一つ説明してゆくと批判文を書く行為そのものが不能になりかねない、という事態に立ち至っていることと深い関係があります。たいてい日本の科学者は、学術誌以外に書くことを嫌悪、あるいは苦手としており、相互批判の伝統も意欲もありません。
 しかし、だからといって手をこまねいているわけにもいかない。とりわけ「食べる」という行為は、生命維持の根幹なのです。
 本書の冒頭に配された『買ってはいけない』批判は、まさに現時点でこそ、そのような脈絡で読んでいただければ、と思います。不安につけこむ煽動文(これをポピュリズムといいます)に、どう立ち向かうか。それを見極める本として、お読みください。
 もちろんご存知のように、『買ってはいけない』論争は、すでに決着がついています。彼らに軍配を挙げた科学者は一人もいません。あたりまえのことです。今では遠い過去の出来事としてしか思い出せない『買ってはいけない』本は、商品の成分を実際に検証したものでもなければ、有害物質が最も大量に入っている商品を槍玉に上げたのでもありません。彼ら自身が明言していたように、類似商品のなかで最も広告で目立っているものを槍玉に上げる。それが『買ってはいけない』の選択基準でした。
 広告量や研究費が潤沢にあるということは、なるほど資本主義的(彼らにとっては悪魔的)ではあるでしょうが、それなりの売上げがあるからこそ有害物質に関する基礎研究費もより多く捻出しうる、という蓋然性も高いのです。もし『買ってはいけない』が、そのことに自覚的であったなら、私は同書を批判しませんでした。
 私の本に対するほとんど唯一の反論が、ヤマザキ製パンに関するものだったのも、そのあたりの無理解に基づいています。第八章に収録した鴻上尚史氏による私への「罵詈雑言」もその一つなのですが、ヤマザキ製パンがらみでの私への難詰だけで総計三百点に達しました(それ以外は、ほとんど皆無だったのに!)。
 私は、こう書いています。
《なお、私は個人的にヤマザキ製パンをできるだけ避けようと思ってはいる。なぜなら、他社にくらべて合成添加物が多く入っているからだ。》
 私への難詰は、この点でのみ「腰が引けている」、あるいは「矛盾している」というものでした。添加物が入っているだけで商品を買わないというのなら、あらゆる薬も、たいていの食材も現代日本では摂取することができなくなります。『買ってはいけない』が、広告が最も目立っているという理由ではなく、その商品が基準値を逸脱している、あるいは不必要な合成添加物が最も多く入っている、という理由で科学的に書かれていたのなら、私は同書を批判しなかった、といったのはそのような意味においてです。
 あの本の著者が狂牛病騒動に乗じて、またしても『早く肉をやめないか?』(三五館)という本を書いて、これもよく売れています。狂牛病問題の根源は、牛に牛を食わせたことにあります。草食動物に共食いをさせていた罪です。狂牛病を軽んじるべきではないし、ゆきすぎた肉食、とりわけ安ければいいという消費文化に私は大いに異議があります(安くなればなるほど生産者サイドの「ゆとり」がなくなり、基礎研究費も捻出できず、最新の科学的知見を生産現場に生かす機会さえなくなって、それが疫病の温床ともなる)。しかしそのような根本を踏まえず、「なぜ肉好きほど早死にする?」という章では、口癖が「肉、食お!」だったらしい松田優作、「(好物は)お肉です」と答えたことのある久和ひとみ、若手記者を集め年に一度「盛大なスキヤキパーティ」を開いていた田中角栄らが、まさにたったそれだけの〝理由〟で早死にしたことにされている。
 あいかわらず、です。ホラー本またはオカルト本というほかありません。
 むろん、警鐘の幾つかには傾聴すべき点はあるでしょう。しかしその警鐘が嘘に基づいて誇張されているのは承服できません。本書『それは違う!』は、そのような嘘の群れに立ち向かったものです。第六章と第七章では「人権」や「平等」や「自由」についての大きな誤解に、第八章では文科系的「評論」の虚偽に、立ち向かいました。
 二年前に「買ってはいけない論争」が起き(もう忘れたよね)、最初の批判者であった私のもとに百二十件を超える執筆・出演依頼が殺到しました。そのほとんどすべてを、お断りしました。申し訳ないことです。でも、そこに留まらず、喧騒を避けたおかげで、新しい仕事にも次々と挑戦することができたのではないか、と密かに思っています。ごめんね。
 幸い、一つの媒体だけに留めた私の文章は、文藝春秋読者賞をいただきました。歴代、坂口安吾、吉川英治、大宅壮一、松本清張、井上靖、松下幸之助、司馬遼太郎、江藤淳、立花隆、宮尾登美子ら各氏が受賞しておられます。畏れ多いことですが、幾多の賞と異なって、読者の投票をもとに決められる賞なので、ことのほか嬉しく思われました。
 最後に、初出を明記しておきます。第一章から第五章:『「買ってはいけない」は嘘である』、第六章:「諸君!」二〇〇一年九月号、第七章:「SAPIO」二〇〇一年一月二十四日-二月七日合併号、第八章:書き下ろし(私のウェブサイトにて連載していたものからピックアップ)です。
 前著『情報系』同様、多くの皆様にご助力いただきました。深く感謝しています。
         
二〇〇一年十一月十日
日 垣  隆

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