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いい加減にしろよ(笑)

ikagen.jpg いい加減にしろよ(笑)
文藝春秋

定価:1,300円(税別)今月まで2割引き

本書は全国の書店またはamazonなどのネット書店でお求めください


<編集者がつけてくれた「帯」のコピー>


お宝なのか、大ウソなのか?

細木数子、
小泉総選挙、
NPO、
13の真価を徹底鑑定!

(帯裏)
恐いもの知らずの著者が笑い飛ばす。

いま、問題の本質が明らかに!




目 次

 第一章 占い師鑑定 細木数子――妖しき大殺界の女王
 第二章 画家鑑定 平山郁夫――権力獲得の裏面史
 第三章 文章力鑑定 なぜ悪文になってしまうのか
 第四章 警察鑑定 こうして被害者は放置された
 第五章 性犯罪鑑定 制度の不備を即座に正せ
 第六章 選挙前鑑定 総選挙をめぐる七つのウソ
 第七章 NPO鑑定 どこへ行く究極の甘ったれ
 第八章 病名鑑定 それより前に為すべきこと
 第九章 再犯鑑定 野放しの心神喪失者
第一〇章 戦後史鑑定 少年法に仮託された幻想
第一一章 火山島鑑定 三宅島現地報告
第一二章 即日鑑定 こんな事故はもう起きない
第一三章 バカ本鑑定 これぞ抱腹の垂れ流し
あとがき
第一章 占い師鑑定 細木数子――妖しき大殺界の女王


1、対話

 日垣「ずいぶん立派な指輪ですね」
 細木「大っ嫌いなのよ、お化粧とかアクセサリーが」
 日垣「宝石専門の〝付き人〟を連れている細木さんがですか」
 細木「大っ嫌いなのよ」
 日垣「普段は、すっぴん?」
 細木「うん。お洒落も宝石も嫌いなの。ただ、私がよく高価な宝石を買うのは、みんな科学、科学って言うでしょう」
 日垣「科学?」
 細木「うん。科学的根拠はないとか科学的実証って。私は科学に挑戦して宝石を溜めてるんですよ」
 日垣「と言いますのは?」
 細木「え、そんなこともわかんない?」
 日垣「もちろんわかりませんよ(笑)。宝石が科学に挑戦って言われても」

 傍で聞いていたら、これは面白い会話なのだろうか。ただの空転インタビュなのか。
 場所を移し、食事をしながら雑談しているとき、細木数子さん(六六歳)が私に尋ねた。
「あなた長男?」
「いえ。次男です」
「お兄さんは今どうなさっているの?」
 私は一瞬、まずい話題になったな、と思った。雑談と言っても、すでに話し始めて五時間も経っている。(私を対象とする)個人鑑定の申込みも取材も拒まれていたので、「むしろ会わないほうが書きやすい」と意地の悪いことを細木事務所に伝えた直後、「では会いましょう」ということになった。京都や東京・神楽坂の関係者に端から取材してまわったことが、奏功したのか、あるいは逆鱗に触れたのかもしれない。ともかく何でも答える、正々堂々とやりましょう、ということになった。
「兄は二十歳のころから入院しています。だからまあ俺が長男みたいなものかな」
 そう答えると、細木女史は即座にこう言い放った。
「やっぱりねえ!」
 私も負けずに言い返す。
「やっぱりそうくると思ってました!」
 ゆとりで笑い返しながら、彼女は言った。
「繊細そうなわりには頑固よね。で、あなた何星人?」
 痛いところをつかれた私は迂闊にも、するりと答えてしまった。
「木星人のプラスです」
「やっぱりねえ(笑)」

 このへんのやりとりには、おそらくコツがある。
 ある勉強会(講演会)の席上で、質問の機会に中年女性が挙手をして、「うちは次男なのですが、分家の墓なのに五輪塔を建てています。それは良くないのでしょうか」と問うたとき、壇上の彼女はこう答えた。
「いいわけないでしょう。分家に五輪塔は必要ありません。そんなことをしたら本家との仲が壊れるに決まっています。ご主人とお兄さんは仲が良くないんじゃないの?」
「えっ、はい、かなり悪いです」
 会場がどよめいた。また当たった、という驚愕が広がる。
「でしょう。そんなことをしたら仲が悪くなるんです」
 ぎっしりと埋め尽くされた会場がしーんとなる。

 だが、ちょっと待ってほしい。質問者は、何らかの悩みをもって、一万円もの会費を払って勉強会にやってきたのである。先ほどの質問内容を聞けば、ただちに「分家なのに建ててしまった五輪塔」がらみで「良くないこと」を彼女の家族が抱えているのは明らかではないか。本家とうまくいっているのなら、次男の嫁がお墓がらみで悩みを訴えなどしない。

 二〇〇四年の夏、私は嫌というほどテレビや本で「細木数子」を見た。週刊誌に出たヌード写真まで見てしまったので、しばらくうなされたほどだ。しかし、等身大の彼女は、勘の鋭い説教好きの普通のおばさんだった。ただし大衆の前に出ると、何かに化ける。
 つっかけを履いて部屋着のまま神楽坂を歩いているとき、行き交う人々は誰も気づかなかった。
 仕事用の豪華な衣装を身につけ同じ神楽坂で買い物しているとき、行く先々で人垣ができた。
 普通のおばさんでありながら、普通でないところは、何度も何度も叩かれ潰されかけながら不死鳥のごとく蘇ってきた体験の積み重ねである。


 2、復活

 二〇〇四年の夏、彼女はおよそ一〇年ぶりに全国ネットで完全復活を遂げた。
 占われる芸能人たちは、彼女の前でびびりまくる。あなたはこうだ、と根拠なく断言され、どうリアクションしていいか、百戦錬磨の芸能人も戸惑わざるをえない。同世代の石原慎太郎都知事でさえ、「この人とだけは一緒に出たくなかったんだよな」と、彼女の横に座っていた椅子ごといつの間にか後ずさりしていたほどである。

〔後略〕

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