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災害報道は何を伝えたのか:廣井脩×日垣隆

saigaihoudou_hiroi160.jpg PDF 災害報道は何を伝えたのか:廣井脩(東京大学社会情報研究所長:当時)×日垣隆 

「災害社会学」の最先端を走り、災害報道や災害情報、 被災地での住民調査などを手掛けつつ、帰宅難民問題を最初に提起された廣井脩氏へのインタビュー。

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目次

巨大地震は集中する
神戸で起きたこと
取材者の目線
取材者の危険と安全
逃げる!
災害は進化する?
「いま、ここ」に伝える
安否情報
流言飛語
貼り紙と携帯電話
身近な対策
帰宅難民


【立ち読み】

帰宅難民

学生5:阪神・淡路大震災のあとに帰宅難民というのが問題になりましたよね。会社から自宅まで歩いて帰るという、ああいう訓練は本当に有効なのでしょうか。

廣井:帰宅難民って、どこで話を聞きました?

学生5:雑誌で読みました。

廣井:東京都が現在、帰宅難民の対策を作成中で、私はその委員会の委員長をやっているのです。どういうことかというと、東京に大きな地震がやってくると想定しますよね。一番被害が大きいと思われるのは、23区に直下型が来たときですが、しかも平日の午後6時に大地震が起こったとすると、遠距離通勤や通学者、または外出している人たちがどのくらい帰れなくなるだろうかと試算をしたところ、371万人と出ました。
 371万人の根拠は、自宅から20キロ以上離れている人はその日のうちに帰れないという計算によります。この人たちをどうするかというのが「帰宅難民」という大きな問題なのです。

 行政が、帰宅難民の面倒を見られるかっていったら、これは無理でしょう。だって、行政はやることがいっぱいあるからです。大怪我をしている人をどうするかとか、火災をどうするかとか。だから371万人に対しては、基本的に行政以外の力で何とか対応してくださいということなのです。
 じゃあ、行政以外の力ってどういうものかというと、やっぱり企業や公共施設ですよね。つまり、学校にいる生徒は学校が面倒を見る、企業の従業員は企業が面倒を見る、それから例えばデパー卜にいる外来者はデパートが面倒を見る、駅の乗客は駅が面倒を見る、ということで、一次的にその施設の管理者が面倒を見てくださいということが一つ。

 揺れが収まって、ある程度時間がたったら、当然家に帰らなければいけませんよね。ところが電車がない。家に帰りたいのだけれど、何十キロも離れていれば、途中でどこかに泊まらなければいけない。そうすると、一時的な宿泊施設も提供しなければいけない。ところが地域の小中学校は地域の住民が入るところだから、帰宅途中の人は入れない。そういう人のための一時的な休息所を提供しなければならない。それを募っているわけです。
 例えば後楽園ドーム。これは「入れましょう」と言ってくれました。それから国技館。国技館って偉いのですよ、確か北の湖(うみ)さんだったと思いますが、「入れないと言ってもどうせ入ってくる、だったら、入れてきちっと管理したほうがいい」という発想をしてくれました。博物館とか、都庁なんかにも入る、ということで、まず帰宅する人のための宿泊場所を提供しましょうというのがもう一つ。

 それから、帰る途中におなかが空いたりするよね、一番問題なのはトイレだけど、それはどうするかというと、まだお願いしている段階ですが、各社のコンビニが面倒を見ましょうというような雰囲気になっています。コンビニに行けば、トイレが借りられるとかね。それから、郵便局が情報を提供するとか。ともかくそうやって、沿道でいろいろな組織が支援をし合って、帰宅する人を自宅まで帰しましょうという仕組みが、今できつつあるのですよ。まだ完全ではありませんが。

日垣:それはとても意義深い問題ですね。万が一のときに、短期間でいいわけですから、実際には3日とか4日でしょうね、企業が総力を出し合うという構想は、ちょっと感動的ですらありますね。企業の底力と本物のボランティア精神が問われるわけです。

 そのお話をうかがっていて思い出したのですが、あの阪神大震災で、いくつかの放送局や企業を回って気づかされたことがあります。震災直後に出社して大奮戦した人たちは、確かに恰好よかった。でも、出社できない人もいたし、何日かたってようやく出てきた人もいる。あるいは夕方5時ぐらいで「お先に失礼します」と言う人もいて、その人が帰ったあと、職場に残った人はとても白けた雰囲気にもなっていました。
「なんだあいつは」って白い目で見られたりもしていたのですが、でも実は、そういう人たちは、地域や家族からものすごく信頼されていたり、隣近所やまわりのお年寄りとかにもとても頼られていたりするわけです。

 僕はそういう姿を見て、とても複雑な気持ちになりました。仕事という視点だけで見れば、逸早(いちはや)く這ってでも出社して、報道や役場や企業の第一線に立った人は英雄なんだけど、みんながそういうふうにしたら、崩れた家に残された者たちは悲惨だし、周囲の弱い人たちは救われない。会社のヒーローたちは、地域や家族の視点から見たら、近隣や家族を"見捨てて"働いているということになる。そのへんにあとで気づいて、ちょっと愕然としました。

廣井:それは大変大事なことだと思います。阪神・淡路大震災で、どうしてあんなに被害が大きくなってしまったかというと、一つには交通渋滞があったのです。交通渋滞が猛烈だったおかげで、パトカーや救急車も走れなくなってしまったわけですね。地震が起こったときは、ほとんど車が走っていない時間帯だったのに、3時間か4時間したら大量の車が出てきて結局、防災活動をまったく妨げてしまった。
[後略]

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