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防災とは何か、復興とは何か

bousai160.jpg 防災とは何か、復興とは何か


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目次

まえがき
2011年3月11日
死体の写真を報道しない日本
震災当日の岩手県大船渡市
意外に役立った「大五郎」の4リットル入りペットボトル
陰に隠れてしまった「長野県・栄村大地震」
津波に飲みこまれた岩手県大槌町の町長
海の近くで再び家を建て始めた人々
大船渡に書店を復活させた70歳の社長さん
「復興特需」の終焉とこれからの仮設商店街
東京の帰宅難民なんて1日野宿していればいい
誰が仮設住宅の草取りをやるべきなのか
公共工事の入札が敬遠されている
被災自治体がぶつかり合うジレンマ
津波は「人生2回」なのか「人生3回」なのか
運だけでは説明できないこともある
書くことは誰かを傷つける
デモや署名運動では何も変わらない
ボランティアの自己満足
ヤバイときは「まず1本タバコを吸え」
営業努力をせずに愚痴を言うなかれ
キャリア官僚出身のオモロイ副市長さん
SNSデビューした被災者
流言蜚語にご注意を
「野次馬は被災地から出ていけ!」論
流される自宅を撮影し続けたカメラマン
「奇跡の一本松」保存は無駄遣いなのか


立ち読み

海の近くで再び家を建て始めた人々

日垣 仮設住宅を建てる場所がないという問題がありますよね。何とか建てても生活が不自由になってしまう。

金野 田舎は車社会なので、車さえあれば多少不便でもなんとかなります。被災者の皆さんが「不便だ」「不便だ」と言うのは、どんな田舎でも一番便利なところが被災しているからなのです。一番便利なところに住んでいた人たちが被災して山奥に行くから、不便を感じるのですね。

Dさん 女川でボランティアをしたところ、斜面に家が建っていました。「以前は坂の上で不便だと思っていましたが、おかげで津波の被害から逃れることができて良かった」と家主が言っていたのが印象的です。

日垣 井戸も災害があって見直されたわけですけれども、では井戸が増えるかというとそんなことはないですね。10年も過ぎたら、喉(のど)元過ぎれば......にならざるをえない。

Mさん 大船渡市では、沿岸地域に居住してはいけない制限区域で店舗の再建が始まっているようですね。店舗兼住宅として今まで生活してきた人は、その制限のために住まいを別に用意しなければならないので困っているとニュースで聞きました。

金野 大船渡では今、復興計画を策定している段階です。制限がもうすぐかかる地区もあります。制限がかかる前は自分の土地に建て直すだけですから、すでに新居を建ててしまった人がけっこういました。ただし、もっと海に近い人は店舗だけという条件で建てています。今後は1~2メートルの嵩(かさ)上げをしなければ家を建ててはいけないという制限がかかることになる。制限は過去にさかのぼって適用できないので、規制がかかる前に家を建てたところと高さが凸凹の街ができあがってしまいます。

「二度と海のそばに住みたくない」と言う人もいますが、「仮設住宅で死ぬのは嫌だ」と思う高齢者の方もいる。「壊せ」と言われるのを覚悟で元住んでいた土地に家を建てている人たちもいるのですよ。もともと平地が少ないうえに、山を少しずつ切り崩したような街なので、高台移転しようとしても土地がない。地価も高くて買えなくなる。土地をもっている人はお金持ちが多いので、土地を売ろうとしません。そういういろいろな問題がありますから、住居の再建は進まないだろうと思います。

日垣 妹夫妻が住む岩手県宮古市でも、広範囲で家が流されました。その場所に、少しずつ家が建ち始めています。あれだけの被害に遭ったのに、たった1年で喉元過ぎてしまっている。「10年くらいは我慢しようよ」と思うのですが。
「家を建てないほうがいい」と行政が勧告できますが、禁止することまではできません。

金野 これは浜の人間の考え方かもしれませんが、「来たばかりだから津波はしばらくは来ないだろう。家が流されても、逃げればいい」と思う人が海辺に再建しているようです。「あと数十年は絶対大丈夫だ」という気持ちはあると思います。

Koさん 土地はある程度の値段で売れるものですか。手放して譲ろうという人は?

日垣 現実問題として私は、双葉町などは住めないことはないと思うのですよ。チェルノブイリにしても同じです。ただ、住めない雰囲気ができあがってしまうと、そこは廃墟にするしかなくなってしまう。

金野 大船渡駅より高台に位置する場所では、これから区画整理が行なわれていきます。そういう地域では土地の売買が盛んです。大手が土地を押さえますから、地元の人は手を出しづらい。行政が動かしてはダメだと決めればよかったのですが。

大船渡に書店を復活させた70歳の社長さん

日垣 役場が主体となると、復興計画を議論するだけで何年もかかってしまいます。みんなに頼られ、みんなの意見を聞く。でも聞けば聞くほど、全員の意見が一致することはない。そういう意味では、大地主さんは決断するのが早い。
優秀で独裁者的な人がいてパっと決めてしまうほうが、商店街はすぐ再建できてしまいます。

金野 本来なら行政がどこかに土地を借りて、そこに仮設店舗を建てるために地元の人に要請をかけるべきところです。しかし行政が土地を確保できないので、大船渡の場合は親戚や知人の土地を借り、自分たちで市や行政機関と相談して建てました。行政をあてにすると、身動きが取れなくなります。でも何かと行政は頼らなければいけない。

日垣 極端に言えば、いざというときのために税金を払っていますからね。あてにしていい根拠はありますけれども、行政を100%あてにしていたら自立はできない。

金野 自立できなさすぎだよなあというのが、この2年間見ていて思うことです。

日垣 「おおふなと夢商店街」の場合は、自治会の会長さんや商店街の会長さんが仕切って、行政抜きで地主さんに交渉したのですよね。土地の使用がOKということになり、すごく頑丈な土台を作って2階建てのプレハブ商店街ができました。一番大きな書店がそこに入っていて、もともと5店舗あった店舗を1店舗にまとめたところ、売上が今までになく伸びたそうです。

金野 その書店は2013年2月、夢商店街を出て新店舗(ブックボーイ本店)をオープンさせました。

日垣 ブックボーイの書店の佐藤勝也社長は70歳です。70歳で店が五つやられてしまったら元気をなくすところ、本が流されたとトーハン(書籍取次会社)と交渉して、新しくお店を出して売上も回復させた。新店舗のための1億円の借金を背負う心意気がいいですよね。

金野 震災直後は、まず今日食べるご飯の心配をしていましたから、コンビニに行っても本だけは売れ残っていました。ブックボーイの社長も、みんなが食糧を買い求めるのに必死な姿を見て「もうダメだ」と思ったそうです。でも、唯一残った一店舗にたくさんの人が来ました。その店は盛(さかり)町という大船渡の隣町にありますけど、大船渡からわざわざお客さんがやってきた。昔からつきあいがあるお客さんから「盛まで来るのは大変なの。早く大船渡の店を再開させてください」と言われて「よし!」と思ったそうです。

 約1年間、「おおふなと夢商店街」の30坪の仮設店舗で商売をして、2013年2月1日に立派な本屋さんを開店しました。オープンから3日間、レジを通った人だけで5,000人もいたそうです。

日垣 ジュンク堂新宿店が閉店するとか、都会でも書店は厳しいですが、すごいですね。5,000人というと、レジを待つ人の大行列ができたのではないでしょうか。

金野 長い人は30分待ったのだとか。車イスでも移動できる通路があるゆったりとした店舗ですが、店中が人であふれて狭く見えたほどです。

日垣 震災直後には誰もが食糧を買い求めましたが、2011年5月あたりから震災の写真集が書店に並び始めました。そこで書店は息を吹き返したのではないでしょうか。

金野 そうですね。当時は震災関連のニュースばかりで、バラエティやアニメも放送していなかったため、子どもの本やマンガを買い求める人たちが多かったのです。一番初めに売れたのが児童書でした。私は「週刊現代」や「週刊文春」「週刊ポスト」などいろいろ買って読み比べたものです。「こんなにみんな本が好きだったっけ?」と思うくらい書店に人がいました。

Kさん ネットがつながらなかったのも大きかったですよね。

金野 携帯がつながったのは、震災から11日目の夜でした。これでも早いほうです。固定電話は復旧まで1カ月以上かかりました。やはり本が求められたのでしょうね。

日垣 10年以上たったら、本を読むためのデバイスを一人ひとりがもっているかもしれませんね。
 津波の被害では、どんな商売でも泥をかぶっています。とりわけ書店は被害が深刻でした。紙は水をかぶるとどうしようもないですからね。そういう光景を見たあとで、億単位の借金を背負って70歳で立ち上がった決断には本当に頭が下がります。

金野 新店をオープンさせた2月1日にお客様の笑顔を見て「やはりみんな本が必要なのだなあ」と思ったそうです。b 日垣 あの書店の社長さんは、行動がかなり論理的ですよね。「ここであきらめたらしょうがない。商売人が商売をあきらめたらどうやって食っていくのだ」と考えました。1日も早く商売を再開しなければいけないときには、地主さんと直接交渉した。次は「仮設店舗にずっととどまっていてはいけない」と新しく店を建てた。実際は直感的なのか、それとも論理的に考えておられるのか。

金野 直感的かつ筋道が立っていると思います。私も記事には書ききれませんでしたが、かなり大変なこともあったようです。二重ローン対策の申請だけでも、半年近くかかったと聞きました。

日垣 佐藤社長は淡々と「そうやるしかなかった」とおっしゃっていましたが、そのエネルギーはどこから出ているのでしょうね。でも、本が好きかというとあまり読まないみたいです(笑)。

金野 読ませるのが好きみたいで(笑)。

日垣 金野さんは、もともと吉村昭さんの本などはお読みになっていたのですか。

金野 『三陸海岸大津波』(文春文庫)は私のバイブルです。ふと気がついたら、地震、津波関連の本が鬼のように家にあります。

日垣 鬼のように(笑)。表現は悪いですが、やはり津波に興味をもっている。

金野 怖いからです。敵を知れば怖くないという思いがありました。


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