
どの国でも、ベストセラーという現象は必ず起きます。ベストセラーだけを
好んで読むという人もおり、ベストセラーなど絶対に読まないという頑迷な人
もいます。
何を読んだらいいかという指標として、1、ベストセラー、2、知人友人た
ちからの推薦、3、書評、4、仕事などの必要、5、自分の好みや勘、6、広
告、7、有名人による言及、8、受賞、などがあるわけですよね。「よく売れ
ている」というだけで遠ざける必要もなければ、「売れている」という理由だ
けで飛びつく必要もないでしょう。
ベストセラーというのは縦軸(短期の販売量)が突出したにすぎませんが、
古典は横軸(時間)の長さに耐えてきただけあって、「評判」を面積で表わす
と(読者数を縦軸に、流通し続けた年数を横軸に)、古典の良書はそれなりの
面積をもっていることが強く推定されます。
時代の波をかいくぐってきた古典の場合、そこに書かれている予想を含む言
論表現が、何十年や何百年も経って実際に通用しているかどうかを、現在の読
者は特権的に判断することができます。いわば神の視点と言ってもいいでしょ
う。
新刊を、神の視点で読むことはできません。
【テキスト】
オルテガ『大衆の反逆』(924円、ちくま学芸文庫)
マルクス『ユダヤ人問題によせて 他』(岩波文庫、588円)
福沢諭吉『新訂 福翁自伝』(岩波文庫、798円)
マックス・ヴェーバー『職業としての政治』(岩波文庫、483円)
井筒俊彦『イスラーム文化』(岩波文庫、630円)
プラトン『ソクラテスの弁明・クリトン』(岩波文庫、483円)
ヘミングウェイ『老人と海』(新潮文庫、420円)
夏目漱石『吾輩は猫である』(角川文庫、483円)
テキストの解説は『つながる読書術』(講談社現代新書)
でお読みいただけます。