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第578-2号(9月8日)


□社説
 ◆日本の敗戦、終戦、そして北朝鮮のあす9月9日
□本気でいくよ Q & A
 ◆会社が終わる。働き方はすでに激変した。だが日本は変化が苦手


□今週のコメント(8月6日)
 ◆世界一の発行部数を誇る読売新聞の終焉(前篇)


 紙面のあまりの凋落ぶりに、この1年半は突っ込む気にもなれなかった。しかし世界一の部数と、薄汚い商法は文字どおり世界の恥ゆえ、かつて朝日新聞の天声人語を初回から検討して当時の人語担当氏を、私の連載直後(!)に計らずも降板させてしまった反省もあった(あそこまで露骨に天声人語筆者を切った勇気は讃えたい)ものの、実に多くの日本人職業作家評論家が「言論の自由」と縁を切り、長いものに巻かれろとの、言葉のプロとして最も踏み込んではならない領域に右も左もなく浸ってしまっている現状を、遅きに失する間際に指弾しておかなければなるまい。


 読売新聞の本当の恐ろしさは、1).大手町の本社は政府に裏から手を回して(権力監視というマスコミの使命を放棄する見返りに)超格安で払い下げてもらっただけでなく、2).違法な販促会社も業界一となり(たとえば3,665円の購読代に5,000円のプレゼントをつける類の販促法)、その明白な違法性を「日本のタブー」とし続け著者に沈黙を強いてきた根拠たる再販制度に、せめて私だけは目も口も閉じないでおきたい、3).私は朝日新聞と赤旗新聞に最も嫌われていたが、右や左のセクトには興味がない(20歳前後には学生運動のセクトにかなり興味があった。
 社青同、第4インター、民青、自民、創価学会、統一教会、中核などの多彩なセクトから「それなりの、かつ抜け出た支持」を得なければ各学部自治会の頂点に位置する全学自治会連合で委員長に4期(2年)も当選することはできなかった。「今は昔」の話だが、全員加盟制自治会の全盛期となったけれども、「自分たちの時代」にしか責任をもたないし、もてない)。


 私はたまたま朝日新聞と産経新聞に小学生のころから親しみをもっており、当時の右翼も左翼も好きになれなかっただけでなく、両翼ともそれぞれの陣営で「みんなと一緒!」という頭脳回路(思考停止)がアホらしかった。
 簡単に事情を解説しておけば、我が家の特殊環境ーー日本でカトリックの家庭であったことが大きかったように思われる。
 バチカンの総本山は、カトリック教徒に「反共」(たとえば各国で共産党に票を入れてはならない)を義務づけていた。バチカンとイタリアの関係が悪くなったことはないけれど、1970年代後半から80年代にかけてイタリアで与党キリスト教民主党が、イタリア共産党に迫られ、かなり面白い政治情勢が拮抗した経緯がある。現在ではイタリア共産党は存在しない。しかし、日本の社会党や民社党や自由党やら民主党(民進党)のように消滅した(かけている)わけではないのである。イタリア共産党は一時的ブームに終わった、との認識を平気で示す評論家も少なくないけれども、イタリアにすら行ったこともないのであろう。無責任な人々であるなあ。ある意味、立派だ。
 ムッソリーのファシスト党なしに地下のイタリア共産党はありえず、戦後のキリスト教民主党の大いなる腐敗なしにイタリア共産党、その後進のイタリア民主党もありえなかった。混乱しないでね。先進国で社民がダメになったのは日本だけなのである(アメリカは「人格異常」に属する100年間を経てきたので別の意味で超例外)。


 イタリアで共産党がグラムシやベルリンゲルなどのリーダーシップにより現実的に支持を集め始めるのは、1973年秋からのことだ。党綱領から、「マルクス・レーニン主義」「プロレタリア・ディクタツーラ(独裁)」「暴力革命」を放棄し、アメリカに代表される「共産主義への恐怖」を取り除き、そして宗教との敵対をなくした(なくして政党は政治にのみ集約できる道を選んだ)。いまでは「あ、そう」と思われるだろうが、このあたりは近代史の山なのである。
 今年はロシア革命ーー初の共産党国家誕生ーー100年であり、かつ「冷戦」は終わっていないーーという経緯を改めて分かりやすく、かつ体験的に書こうと思う。1917年から今年まで、世界の片面は「共産主義ものすごく怖い!」の歴史であった。ブッシュもオバマもこのパラダイムから一歩も出ていない。初めて出てしまったゆえに大混乱が生じている初めてのアメリカ大統領がトランプだ。


 朝鮮戦争もベトナム戦争も、始まりも終わりも実はハッキリしない冷戦も、結局のところは、アメリカとの軍事連盟国および29か国でなすNATOの「共産主義が怖い!」に尽きる。読売新聞は1985年から、このような路線に立った。


 ともかくこのポイントを無視できる近代史学者や庶民は、単にぽわわぁんと夢を見ているのだろう。


 さて、天声人語ほどの知名度をもたない「編集手帳」(1面下のコラム)もすでに悲惨きわまる事態になっており真正面から扱えばイジメになってしまうので敢えて控えめにしておくが、読売新聞では一番人気の「人生案内」に触れねばならない時期にきたと確信する。
 以前の天声人語に対する「原爆級投下」級ーーという表現は本日が8月6日なだけに誤解を抱く人もいないでもないだろうが、「忘れてはならぬーー語り継ぐ」の意味が私にはよく分からない、陳腐すぎてーー忘れるわけもないのは、たとえば至近の冤罪だったイラク戦争や、人間の残虐さを示して余るルワンダ内戦などだろうーーは、『エースを出せ!』(文春文庫)に収録されている。高校3年間、インターハイをめざす二つの部活と生徒会だけでは飽きたらず、応援団にもいた私は他の応援団や生徒たちとともに、相手のチームの一応エースに向かって「エースを出せ!」と、いまから思えば気の毒な声援(罵倒)をしていた。甲子園と絶対無縁な弱っちい高校のエースは簡単に崩れる。崩れなくても弱いのにね。


 さて前述したとおり、世界一の部数を誇る読売新聞の、一番人気のコーナーは編集手帳ではなく、人生案内である。である、ではなく、あった。ここでも声援を送らねばならない。エースを出せ! ーー。


 本日の人生案内の「読者」側は相変わらず「突っ込みどころ満載」である。


《50代の女性。20代初めの娘が私にうそをついて、彼氏と性行為をしたことを知り、とてもショックです。


 女性の友達と旅行すると言うので、快諾しました。出発当日、気になって念を押しましたが、娘が私の目をしっかりと見て、「友達と行く」と繰り返したため、信頼し見送りました。


 しかし釈然とせず、娘が帰宅後、いけないと思いつつ、私物を確認したところ、やはり彼氏と出かけていたのです。その後も度々、うそをついては外泊しているのを知っています。


 情欲を抑えて清く健全な交際をしてほしいと思い、娘にも常々、そのようにさりげなく話していました。あどけない顔立ちでニコニコしながら、平然とうそをつく娘を憎らしくさえ感じます。


 結婚するまで処女でいてほしかったという私の願いが今時、古いのでしょうか。(神奈川・J子)》


 情欲(笑)。処女信仰!


 ありふれた回答だとしても、《古い!》から始めてほしい。しかも、前提となる20代成人のうそ?


 質問は面白く、かつ真剣ぽいのに、そこを外す回答とは?


《子どもにうそをつかれるのは、親としてなんともつらいことですね。まして、年頃の娘さんが彼と泊まりがけの旅行に行くまでに交際を発展させているのは、母親としてさぞご心配のことと思います。


 ただ、娘さんが一方的にうそをついているのではなく、あなたの側にうそをつかせている原因があるという視点もお持ちになることが必要かと思います。異性との交際は、時代とともに随分と変わっています。(中略)


 どんなに時代が変わっても、守るべきものは変わっていないと私は考えます。それは相手を真剣に思う気持ちです。軽率な行為で女性の身体を傷つけないための知識と配慮も、男女ともに不可欠です。この2点をどこまで娘さんが理解しているかを、母親として一番気にかけるべきです。


 自分の行為が母親を傷つけ、理解してもらえないことを知って、うそをついている娘さんの胸中にも思いをめぐらせてあげませんか。》


 げげげげげげ。なんなんだ、このクソ文は? どうやったら、こんなにつまらない文章が1,000万世帯近くを相手に書けるのか?


 アトランダムに、別の日のものを挙げてみる。


《50代の女性。夫が女性下着に異常な興味を持つ下着フェチです。


 普段は静かで真面目な人ですが、8年ほど前、女性の下着を身に着けているのを見てしまいました。私は驚いて泣き叫んでいました。夫もショックと恥ずかしさで逃げるように家を出ていきましたが、夜遅く帰宅して、「もうしない」と言った記憶があります。


 夫は数年後、病気で大手術をしました。私は全身全霊で夫を守ろうと、入院中はもちろん、自宅療養中も寄り添いました。食事にも気を付け、できることは何でもしました。


 しかし、また見てしまったのです。夫は「ストレス発散だ」「趣味だから」などと、開き直った言葉を口にしました。


 服薬の影響で男性機能が落ち、同時に昇進コースから外れたストレスがあったのだと思います。女性の下着を着けると安心するのでしょう。私のことは大事だと言い、浮気はないと思いますが、約束を破ったことが理解できません。別れるつもりはありませんが、不信感でいっぱいです。(埼玉・K子)》


 おもろいよね、この質問も!


 キモは、どう読んでも《男性機能が落ち》なんだよね。ほかにもいっぱいある。そこをビシッと断じて励ましましょうか。


 が!


 著名な精神科医は、こう答えるのだ。


《ご主人が異性の下着を身に着けて楽しんでいる。【中略】奥様がこんなに不快を感じ、苦しんでおられるのだから、もはや、「個人の趣味」とは言えないでしょう。ここまで夫を愛し、夫のために尽くしてきた奥様のことを少しでも考えるなら、即刻やめるべきですが、ご主人はあなたがいかに苦しんでいるかを十分に分かっていないような気がします。


「まあ許してくれる」と甘く考えているのでは? だから言い訳ばかりで、まだ趣味を続けている可能性もあります。これは「やめてください」と懇願するだけでは不十分です。がつんと脅かしてやらねば、気持ちが届かないかと。


 そこで、「やめなければ離婚する」と言ってみては? いや、本気でそう考える必要はないんです。あくまで脅かしですが、真剣な態度で言い放つことが肝心です。この薬は効くかもしれませんよ。》


 読売新聞の看板コーナーでの回答を読んで、出るのは溜息ばかりなり。

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