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シラク空爆 米英仏の責任、再び冷戦の始まり

 シラクの内紛は、ソマリアやイエメンやパレスチナなどとともに、大国は誰も本気で解決したがっていない。シリアの内紛(内戦)を8年に亘り現地で見てきた者として、日本の報道からスッポリ抜け落ちている最も肝要なポイントを、今回はきっちり指摘しておきたいーー。


 第1に、日本の政権(野党も変わらない)はアメリカ大統領主導のシリア爆撃に「支持」を表明したが、主体性がまったくない。
 化学兵器施設があるとしても、化学兵器施設が世界ダントツの規模の充実度で保持しているのは自他ともに認めているように米国である。この「自己正当化」は小学生だって、納得できまい。
 70年あまり前には原爆を広島と長崎に落とした民間人大虐殺につき反省を一度もしていない国であり、ベトナム戦争などでの化学兵器使用も広く記録に残っている。


 第2に、日本国内のマスコミ報道では例外なく、トランプ大統領の空爆の決意が「他国の支持を得て」いるかのようにされているけれども、たとえば英国下院ではさっそく否決された。先制的軍事行動は両院の承認を一般に必要とはしないとはいえ、昨年4月に米国がシリアを攻撃した際、国防相は「英国が攻撃に参加するには議会の承認を必要とする」と明確に述べた事実がある。
 米英仏は化学兵器禁止条約(最初はハーグ陸戦条約、2度目はワシントン会議)の参加国でありながら、いずれも(国内=議会での)批准をえられなかった。このたびも「米英仏」による空爆であり、「アラブの春」のCIAによる転覆作戦(もともと独裁者を育てておきながら都合が悪くなると殺す)、とりわけリビアへの空爆と酷似している。最後まで抵抗したカダフィ大佐(リビア元首)政権に対し、無人機(ドローン)が空爆を繰り返し(私はその様子をチェニジアからリビアにかけて現地で実際に見聞している)、"地元兵による処刑"という形をとって実際にはCIAがカダフィを抹殺するに際して「大量破壊兵器の使用が危ぶまれた」と報道された。
 化学兵器、生物兵器、核兵器が現在に至るまで発見されなかったのは、イラク戦争のときとまったく同じだ。
 かつてCIAがフセインやらカダフィやらを傀儡(かいらい)に立てたときから大馬鹿野郎と明確に意思表示してきたが、私ごときの断言だけでは日本国内さえ動かすことはできないーーとしても、戦争の構図を我々はハッキリと認識しておく必要があっただけでなく、その必要は消えていない。


 第3の深刻な問題として、米英仏 V.S. シリア の構図というように大メディアでは描かれたが、事実とまったく異なる。
 米国ーーオバマ大統領が「イラクからの撤兵」を形式のみ実行しつつ、数を増やしてテロリストが皆無化したアフガンに移しただけなのは広く知られている(兵士勤労者の雇用維持のため)。米国が、シリア内戦をロシアに丸投げしてトンズラしたのは、当時はマスコミや各国軍部で知らぬものなどおりはしなかった。もう忘れたのかにゃ?
 英国ーーアラブ各国に対して双方(!)に戦力を売る武器の商人国家であり続けている。つまり、どこかで常に戦争がないと生きていけない経済構造をもつ。
 仏国ーー第二次世界大戦までシリアなどを植民地化しており、(旧)宗主国として決して対等な態度をとったことがない。
 米、英、仏が世界を代表している感さえあるものの、たとえば独、伊、露などなどは世界ではないの?


 第4ーー私はロシアが好きになれない。何度も何度もロシア(旧ソ連)やシリアなどを行き来して、文化があまりに異なることも知悉(ちしつ)している。西側インテリ(笑)に開放されたゴルバチョフ時代の市民集会ですら、発言のキツい婦人を黙らせるために平気で注射を打って気絶させるのを私は見た。ひえ~。
 だが、国際情勢や軍事分析は、好き嫌いで論じてはならない。当たり前だろう。まず、シリア内戦を米英仏はロシアに丸投げ(全面委託)した事実は、最も重要な経緯である。アサド政権を、ロシアさえ扱いかねている。米国は扱いきれなかった。
 簡単にいえば、反アサド勢力は主に4勢力あり、そのすべてが「イスラム国」および「イスラム国と内戦を続けるテロリスト集団」であるからだ。
 かつてアサド政権を作り上げた米英仏が、かつてのイラクやリビアなどと同様、アサド政権打倒(テロリスト支持)に動き、シリアがテロリスト集団の紛争の場と化して8年がすぎた。ロシアは現政権を支持する形、米国は逃げたのである。米国大統領が変わったからといって、アサド政権をどうするか、に本来軍事介入権のないトランプ大統領が「施設そのもの」に空爆を行なうとは?


 第5に安倍首相は、これまで繰り返し国内問題ーー夫婦ゼニゲバ越権問題かーーはもとより、たとえばイラクでの誤爆や、そもそも大量破壊兵器がなかった事実に対してすら、小泉首相さえ「アメリカを信じる」といいきりながら、片腕であった安倍さんは首相になってからはさらにエスカレートし、アメリカ大統領も国会も認める(イラク戦争に対する誤謬など)諸事実に対してすら、「わたくし自身が直接確認しておらないものに対して見解を述べることはできません」と国会で繰り返してきた。
 祖父と同じ売国奴なのか、いい人なのに単なるお莫迦さんなのか。


 第6にーー。シリアへの爆撃で米英仏のみが(国内で反発に遭いながら)実行に踏み切ったことは、変だと思おうよ。米英仏などはもちろん、化学兵器の(シリアより数千倍は)立派な研究施設を保持しており、研究施設をもっているという理由だけで米英仏がシリアを空爆するのはどう考えてもおかしい。
 トランプ大統領は博打に出た。うまく行き始めていた中露を徹底的に敵視するつもりなのだとしたら、"成功"すると見る。が、これは冷戦を呼び覚まして軍事費を伸ばす目的でしかなく、「サリンなど安くて自前で持てる化学兵器は使うな、米英仏から買え!」以外のメッセージにはならないことを銘記せよ。しかも、化学兵器使用の証拠を米英仏は一切提示しえていない。


 最後に、どのマスコミも触れておらず(日本も)、しかしシリアやイランなどとの根源的問題は「イスラエル」なのだ。
 フランスが植民地に活用しまくり、イギリスが二枚舌を使ってイスラエルの建国とパレスチナの土地略取を許し、米国の政権がユダヤ人なしに成り立たない事実こそが、シリア内紛の本質としてある。
「ガッキィファイター」で2年半前にも現地から1カ月に亘ってレポートした、シリア内戦とカオスと今世紀最大の難民流出は、いよいよドロ沼化している。空爆で何も解決しない。イスラエルの対シリアに向けたドローン(ドローンはイスラエルの開発)による大量の空爆ーー私も至近距離で見たーーが日本を始め西側のメディアで報じられてこなかったから、旧態依然の「9.11型」テロ対策はまったくの見当違いになっているにもかかわらず、相変わらず「空港でのますます税金垂れ流しのボディチェック」と気まぐれな爆撃により、民間人の虐殺が対抗テロを育ててしまう。


 米国アトランティックシティのタージマハール(派手なカジノ)は、世界でもありえぬ倒産をして売却された、あの光景を思い出す。タージマハールを建てて大失敗したかに見えた、のちのトランプ大統領は、しかし当時かなりのトクをした。債権者に多大な負債を押しつけ、自己愛の塊トランプは「わざと失敗」で大儲けをしてきたのだ。
 カジノのビジネスと、シリアやレバノンやイスラエルやパレスチナなどのリアルな紛争と難民は、当然のことながら違う。それを「同じ」と考えるツイッタラー大統領は、4年もちそうにない。次期などは断じてないのに対して、プーチンと習近平は、いまや絶大な支持と独裁的権力をもった。かつ、中国とロシアのGNPの伸びは驚くべきものがある。
 トランプには、かつて石炭が石油に変わるとき対応に遅れた事実を彷彿(ほうふつ)とさせる旧態依然の保護主義しか手はなく、空爆で米国民の目を逸らしているが、ブッシュ父子より30年は思考が遅れている。やれやれ。きっちりモノをいえる側近は誰もいなくなったーー。

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