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tabihaitsudemo.jpg 旅はいつも寄り道気分


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目次

1.アトランタ再訪
2、バッグのななめかけ
3.迫力ルポに魅せられて
4.アイラブユー
5.海外渡航1千万人時代
6.路上賭博
7.ベルリンの壁
8.今年の重大ニュース
9.たっぷりかかる時間
10.ビデオと映画
11.日本人の戦争観
12.ハイテク文具
13.各国電話事情
14.トイレの古今東西
15.学歴社会
16.平和な風景
17.最底辺の子どもたち
18.デパートを歩く
19.地球儀ブーム
20.チャイナタウン
21.海外での事件被害
22.動物園
23.ものを乞う権利
24.米国の授業風景
25.写真を撮る
26.孤児二世の医師第1号
27.禁煙地帯 上
28.禁煙地帯 中
29.禁煙地帯 下
30.長野五輪への提言
31.読書の周辺 上
32.読書の周辺 中
33.読書の周辺 下
34.情報の整理
35.成田空港
36.自動販売機
37.近くて遠い国
38.ソウルの暑い夏
39.頭痛のタネ
40.ハイジャック第1号
41.美術館めぐり
42.政治家への注文
43.日本の発明品 上
44.日本の発明品 中
45.日本人の発明品下
46.日本人のヌード観
47.日本人の皮膚感覚
48.ボランティア
49.マルクスが好き
50.さらば紋切型
51.子どもの入院
52.さまざまな50周年
53.四万十川にて
54.路面電車
55.ソ連邦の崩壊
56.年賀状にて
57.あいさつが基本
58.わが愛するキューバ
59.日本の弁当文化
60.エイズの現実
61.子どもと遊び
62.紙幣と人物 上
63.紙幣と人物 下
64.オリンピック解説者
65.仕事と余暇
66.中国の資本主義
67.東洋のカジノ 上
68.東洋のカジノ 下
69.香港の新聞広告
70.病めるアメリカ
71.ショッピング
72.プライバシー
73.異文化とともに

1991年から1992年まで信濃毎日新聞に連載された作品の電子書籍化

立ち読み

13.各国電話事情

   わが仕事部屋にも、コードレス電話がある。極端な話、トイレの中からでも、相手に気づかれさえしなければ、会話に応じることができる。そのうちこれがテレビ電話にでもなったら、そうはいかない。いくらなんでも失礼すぎる。
 ソウルやニューヨークでは、やたらと携帯電話で歩きながら会話している姿を見かけるようになった。日本ではまだちょっと携帯電話には、なにやら冷ややかな視線が投げかけられないではない。かっこつけやがって、とか。すぐそばに公衆電話があるじゃあねえかよ、とか。ひがみ、ともいう。NTT新社長が就任時に宣言したように、アメリカ並みに携帯電話にかかる料金体系が格安になれば日本でも、急速に普及するはずだ。
 それにしても日本では喫茶店などで、だれかのポケットベルが鳴ると、それまで油を売っていた人々が一斉にポケットをまさぐり始める姿はいつ見ても、おかしい。

         *

 中国では公衆電話の横に、盗難防止のために監視員がいたりする。かつて共産党が権力を牛耳っていた東欧各国では、恐ろしいほど電話が通じなかった。市民同士の自由な会話を妨げるためだ。盗聴も日常茶飯事だったという。そういう「仕事」をしていた大量の共産党員が、このたび失業を余儀なくされた。

 ところで、いまだに盗聴事件が絶えないアメリカには、電話会社だけで1400社以上ある。地域や回線によって料金体系がずいぶん違うのも、そのためだ。5セント玉一枚で何時間でも特定地域内にかけられる公衆電話なんていうのもある。自動車電話もアメリカでは、5万円もあれば自分の所有物として使い始められる。国内線旅客機には、クレジットカード専用のエアーテレホンが客席ごとについていたりする。
確かにテレホンカードは日本のオリジナルだけあって、国内いたるところにカード式公衆電話が普及しており、外国人を驚嘆させるほどだが、そのわりには国際電話のできる公衆電話が少ないのも、外国人の驚きを誘う。テレホンカードといえば、ドイツでは、クレジットカードほどに分厚いものが普及し始めた段階だ。どこに売っているかといえば、郵便局と銀行で。それ以外では、買えない。パリでは今や、ほとんどがテレカルトを使うカード式なのだが、コインとの併用ができないのが不便ではある。

とはいえ、フランスの電話事情を観察していると、そこには哲学が存在していることに気づかされる。日本のように景観を傷つける電話線や電柱が、欧米諸国の多くには存在しない(最初から地中化されている)ということもさることながら、それだけではない。



 フランスには多くの家庭に、国から無料貸与でミニテルという端末が普及している。列車の座席子約や銀行の残高照会や、即席の家庭教師や法律相談といったサービスはもちろん、例えば障害児をもった母親同士が匿名のまま、交流できたりもする。英語を打ち込んで仏語へと瞬時に翻訳するサービスもある。英語と露語なら、96%の正確さだという。日本では採算が重視されるから、日韓自動翻訳サービスの普及すら望むべくもない。
 さて僕がパリでカットに行ったとき、仏語が全然しゃべれない客は初めてというその美容院で、たまたま隣の席に座ったよしみで通訳を買って出てくれた紳士の自宅に招かれて、そこで初めてミニテルを見たのだ。僕は彼に、どうしても聞いておきたかった質問をした。なにか問題はないのかと。日本でなら絶対、おかしな使い方になってしまいがちなのだが、そういうことはフランスではありえないのだろうか、と。
 期待に反してフランスでも、このミニテルを通してテレビゲームが子どもたちを釘づけにしているだけでなく、「ヘルシー」とか「パートナー」というメニューでは、ポルノまがいのあやしげな会話サービスが繁盛しているのだった。日本では89年夏からスタートしたダイヤルQ2は、だからフランスを6年「先輩」としてもつ。  日本の電信技術の先駆者、佐久間象山先生も、さぞかし驚いておいでだろう。ちなみに日本で電話事業が開始されて、今年は101周年。そろそろ哲学を持つ時期にきている。

[1991年2月記]

14.トイレの古今東西

 尾寵(びろう)な話で恐縮だが、"書便派"というのをご存じだろうか。その造語のルーツはそれほど古いものではなく、初出は惟名誠さんたちの主宰する『本の雑誌』四十号(1985年2月)で、東京・杉並区の青木まりこさん(当時29歳)の投稿だった。
「私はなぜか長時間本屋にいると便意をもよおします」。これがきっかけとなっで、「続々と"隠れ書便派"が名乗り」(同誌四十一号)と、巻頭大特集まで組まれたことは記憶に新し......、くもないか。
"書便派"現象の科学的解明は大脳生理学の最新研究を待つしかないが、一種知的な刺激によって一部の人々に尾寵な反応を引きおこすことは事実として注目に値......しないわな。
 とにかく僕も、トイレの場所を確認できている書店や百貨店でないと、おいそれと入るわけにはいかないのである。とはいえ、日本では他国に例を見ないほど、公共トイレの数が多いことは確かなことだ。
 だが、欧米人の体内タンクが大きいためなのかどうか、巨大な駅構内にも職員用トイレしかない。やっと道端にあったと思ったらコイン式で、どうやってあけたらいいのかわからず、失禁寸前の悶(もん)絶、などという体験は珍しいことではない。



 全国各地を歩いていると、最近、日本のトイレがやけにきれいになってきていることに気づかされる。かつて公衆トイレは公臭トイレの異名をとり、臭い・汚い・怖い・暗い・気持ち悪いなど、3Kないしは5Kの代表みたいにいわれたものだ。
 が、1984年12月に「トイレ文化の発展を目指す」として日本トイレ協会が発足してからというもの、鳥取県倉吉市をはじめ各地の市町村が、がぜん公衆トイレ革命に力を入れ始めたのだった。1カ所4千万円なんていう御殿みたいなやつも登場した。いつのまにか、えいやっ、と鼻をつまんで呼吸を停止、1分間で用を足すというがごときの愚策を弄(ろう)する必要もなくなった。
 温水洗浄便座が登場し始めたころ、僕は取材先のお宅で好奇心から「洗浄」というボタンを立つたまま押して、ズボンの前をビッショリにしてしまったという、とても人様言えない初体験がある。取材先のお宅の奥様は、大笑いしながら僕を慰めてくれた。
「いいんですよお。これで二人目ですから」。夫ぎみが頭をポリポリかいていた。
 個人的な好みをいえば、僕は洋式便座より、和式のほうが、やすらぐ。おそらくは、和式というよりもアジア式といっだほうが正確なのだろう。ただし、例の金隠しは日本のオリジナルかもしれない。それにしても、なぜ、だれの目から、金隠しで守る必要があったのか。  中国でもインドでもマレーシアでも、金隠しは見かけない。とはいえ、ときどき壁のない、つまりは外から丸見えの便所には金隠しらしきものがついていることがある。ということはおそらく、日本式金隠しのルーツを探っていけば、日本の便器はかつて外から丸見えだったがゆえに、便座に工夫をこらして「隠す」必要があっだのではないか。確認されている日本最古の便所は縄文時代のもので、やはり外から丸見えだった。比較的上流階級の各家庭に便所が登場するのは、室町時代のことだそうだ。厠(かわや)はもともとは、川にたれ流していた「川屋」がそのルーツなのだという。

 川にたれ流すのは別段、非衛生的なことではない。自然水の中には幾多の微生物がいて、完全に分解してくれるからだ。そういうリサイクルが、かつては自然の姿としてあった。だがいつのまにか、科学技術文明かそのリサイクルを破壊してしまった。
 アジア各地を旅して、川の中で、あるいは広大なトウモロコシ畑の中で、用を足したときの爽(さわ)やかさ軽やかさ気持ちよさといったら、ない。何ものにもかえがたい解放感だ。
 ところで日本人男性が一生で使うトイレットペーパーの数は1512ロール。日本では1個平均37円だが、イラクでは644円、世界人口の3分の2は、トイレットペーパーを使っていない。もともと日本のトイレ文化は、中東からアジア経由で入ってきたのだそうだ。だがイラク人は今、トイレでの生活まで非日常性を余儀なくされている。

[1991年2月記]
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