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日本の戦争を見に行く

nihonnosensouribon160.jpg 日本の戦争を見に行く
      
 


終戦70周年企画――書き下ろし作品


 終戦直後のイラクなどの写真も多数掲載。

 独自のスタイルで戦争を再検証した最新刊。
 第二章、第三章は『「松代大本営」の真実』が刊行されたあと新たな史料に基づいて書きました。

   多くの当事者たちから何日も何年もかけて取材した真実――。

    定価:発売年限定価格:1,980円(税別) 






目次

序章  経済成長世代にとって戦争とは何か
第一章 消せない記憶-満州開拓団
第二章 黙殺の地下壕―― 松代大本営Ⅰ
第三章 地元の人へー松代大本営Ⅱ
第四章 裁きの果てに~アメリカ人捕虜とBC級戦犯の今~
第五章 二〇世紀から-国境を考える
第六章 二一世紀へ- 国境で考えた
第七章 二一世紀にとって平和とは何か
第八章 911直後のアメリカ
第九章 イラク人への手紙
あとがき


立ち読み

序章 経済成長世代にとって戦争とは何か

 1958年生まれの私が、初めて戦争体験談を聞いたのは、近所のおじさんからだった。
死んだ仲間を食べた、その様子を仔細に語るおじさんは、小学校に入ったばかりの私を怖がらせようとしたわけではなかった、と思う。自分を責めているようでもあった。おじさんは、昨年暮れに亡くなった。

 定年退職して10年近くがたつ父は、学徒動員の寸前に敗戦となったらしく、戦地に赴いた経験はない。父は敬虔なクリスチャンだった。私が小学3年生の4月8日、花祭りの大きなイベント会場で、全員起立の「君が代」斉唱と相なったことがある。父は絶対に立ってはならぬと私たち兄弟に命じた。私にはひどく理不尽で恥ずかしいことと思え、憮然として時間の過ぎるのを待った。父は、子どもに手をあげるような真似はもちろん、声を荒げて叱りつけることもない高校教師だった。花祭の帰り道、父は初めて、戦争で自分の兄と弟を失った話を私たちに聞かせた。

 成人するまでの私が、親の世代から戦争に関わる体験を語り聞かされたのは、わずかに、この二つだけだ。あとはすべてメディアを通しての見聞である。

 私には、テレビのない時代の生活というのは想像力を要する世界である。けれども、ベトナム戦争のニュースをテレビで見た記憶はなく、級友たちと「安保」や「基地」を語り合った経験もない。学校で現代史を学ぶ機会は一度もなかった。小学校から高校までの歴史の教科担任も、クラス担任も、みな戦後生まれだった。

 あの戦争に関わって父に与えられた本が、いくつかある。白血病で逝った被爆二世を描いた『ぼく生きたかった』、そしてヨーロッパ戦線でのパルチザンを扱った『ぼくの村は戦場だった』というタイトルが、いまも記憶に残る。

 被爆の本を読んだ小学生の私はアメリカを憎み、パルチザンの本を読んで自衛隊への志願を思い立った。愛する国を侵略者から守る行為が、ひどく美しいものと私には映ったのだ。そして三島由紀夫が自決したとき、中学1年生の私の胸中に、何やら熱いものがこみあげてしまったのである。『ぼくの村は戦場だった』によって息子が、よりによって自衛隊に憧れ始めるなどという事態は、教員組合活動家の父親にはとうてい想像もできぬことだったに違いないと、今にして思う。

 高校卒業時にも防衛医大は選択肢の一つだったのだが、自衛隊に対する教師たちの目があまりにも冷徹つまり差別的だったことに加えて、「愛する国を侵略者から守る行為」は、やむにやまれずなすべきものであって、それを職業にすることにためらいを感じ始め、選択肢から除外した。だいたい世の知識人たちは、こぞって日本を不良な国と描くことに全力を尽くしていたし、「愛国」は額に日の丸でも締めなければ口にしにくいような雰囲気があった。

 物心ついたときから自衛隊やら安保やらが存在していた世代には、それらを相対化しにくい。そういう現実の受容にともなう葛藤がない。私が生まれたときから憲法は現在のようだったし、自衛隊も同様に存在していた。ある行為が法律違反だというのではなく、その存在自体が憲法違反だという議論は、その存在が誕生する以前の状態を知っている者にとって有効だった。苦しいことだが、自衛隊誕生前夜に、その誕生を阻止できなかった政治勢力は、まずいったん敗北を認めねばならなかったはずだ、と私は思う。



 憲法違反の疑義濃厚な軍隊が誰の目にも明らかに存在しているという状況は、しかし、そんな議論を延々続けてこられた平和の裏返しという意味で、決して不幸なことではなかった。少なくともこの半世紀、日本の軍隊に、戦場での殺人命令は一度も下っていない。現代国家にとって、軍隊が実戦に突入しない状態が永遠に続くことこそ、最も望ましいはずだ。
日本人には戦争のリアリティは、確かに希薄だ。だが、世界中の多くの地域には平和のリアリティは、ない。(後略)

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