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mekaraurokohassouhou160.jpg 今日も目から鱗の発想法


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1995年から1997年にかけてPC-VANネット上で連載された、コラム集。冤罪事件、サイエンス、SMAPまで、既存のメディアとは違う角度からの分析と、見立ては今も読み応え充分!日本はこうして21世紀を迎えていた! 
「ガッキィファイター」サイトのみでお読みいただけます。



目次

オンラインコラム
橋本兄弟と介護
くそみそな話  
現代「スクープ」考  
あいがも農法  
いまどきの大人
シンプソン裁判とオウム裁判
米国の宿敵キューバを襲うドル
本や新聞は化粧品とは違う?
年賀状を12月30日投函分まで元日配達せよ
1995年のファッションについて
元旦の新聞に見るインターネット
自画自賛『神戸新聞の100日』の憂鬱
ミスター文春の「朝日」入りに思う  
「パソ婚」または新「活字世代」について  
「馴染みの店」はありますか  
インターネットで本を注文する
司馬遼太郎さんの絶筆は「住専」
新聞対テレビ対パソコン
夫婦間セックスについて
書評というお仕事  
携帯電話殺人事件の予感
TBSに何を期待するか  
検証に耐えないテレビ番組
「創価学会」を論評せよ
おじさんは楽器を弾けない
「無言電話6500回」と「パチンコ中毒」
家庭訪問を終えて
さすが報道のTBS!
DNA捜査への疑問  
尊厳ある死か、単なる職務怠慢か
家族を捨てた北朝鮮の亡命者
堕胎と中絶と流産と減胎と  
安楽死は殺人だが殺人罪ではない
ワープロの進化について
教師たちのマインドコントロール
子どもが読めぬ児童図書館
大学の存在意義を考える  
科学という名の冤罪  
父親の威厳について
朝日VS読売の紙上外乱闘 
パソコン通信の恩恵  
幼女誘拐の犯人像を推理する  
東京ドームのSMAP  
記憶障害者が増えている  
インタビューについて  
科学観が変わる(老いのパラダイムシフト)
科学観が変わる(続)複雑さのパラダイムシフト
人工生命はスゴイぞ
中公新書『父性の復権』を推す
民主党とインターネット
塩の専売廃止を前に 
自動演奏ピアノは「紙」で動く 
なぜ治るのか 
精神病棟という問題 
金属バット事件の16年 
何のための家? 
命の値段 
受験数学は役に立つ 
長野五輪リハーサルの悪夢 
私が私であるために-正月メディアから 
松田聖子の離婚について 
分業と旅行で成った日本経済 
「たまごっち」について 
製薬してから病気を探す 
仮想空間の落し穴 
情報公開と学校 
なぜ人は好きになるのか 
『平気でうそをつく人たち』とは誰か 
決断の速さについて 


立ち読み

分業と旅行でなった日本経済

分業の妙

 自宅の風呂が壊れた。漏電のためヒューズが飛んでしまうのだが、どうやらモーターがやられて水道系統にまで被害が及んでしまったらしい。どこに連絡すればいいのだろう。

 我が家の風呂は、太陽熱発電や室内暖房ともリンクしているため、配線や配管が複雑を極めている。私は電気系統には強いのだが、今回ばかりはお手上げだった。結局、水道工事の職人さんに来てもらい、モーターと水道系統の故障を同時に修理していただいた。私は傍で、その手際よい工程に感嘆の声をあげた。さすが、というしかない。

「仮に燃焼装置を一式取り替えなければならないとしたら」と専門店に念のため聞いてみると、「半日はいただきたい」との回答だった。日本ではさして驚くべきことではないのだろうが、世界的には驚嘆に値する。同じように、たとえば「電話の引っ越し」が必ずスムーズにいく、と信じられている国は日本だけだろう。

 もちろん、町の電気屋さんが家電品を売りっぱなしで修理ひとつ自分でできなくなった、という類の話には事欠かない。職人がいなくなった、ともよくいわれる。修理という点でいえば、アジア諸国での「とりあえずその場で何でも直しちゃう」文化には日本はまったくかなわない。ただし、「分業」という視点を導入すると、遠隔地にある製造元で必ず日本では修理してもらえるし、最低7年間の部品確保がメーカーに義務づけられているだけでなく、実際にはたとえば30年前に買ったオープンリール・レコーダーの修理さえ引き受けてくれたりもする。

 思うに、この分業の妙こそ、中世以降、日本の市場を支えてきた根幹である。

江戸の先駆け

 革命(1917年)前のロシア文学を一時愛読したことがあったが、最も不思議だったのは、17世紀以降ですらロシアには、官吏とパン屋と工員と銀行家と農夫くらいしかいないのでは、と思われたことである。職業に多彩さがないのだ。
対するに、江戸期には「傘張り職人」だの「髪結いの亭主」だのが読み物にも頻繁に登場する。このような分業が、明らかに近代から現代を経て日本の市場を成熟させた。ロシアなどを含めて、市場経済が停滞している国々は、最近(冷戦時代に)そうなたったのではなく、ずっと前(数世紀前)からそうだったのである。

 江戸期には、たとえば畳一枚にも、畳屋(店持ち親方)、畳刺(自立した職人)、手間取(親方に出入りする下請け)、職人(親方の店で働く職人)、出居衆(出稼ぎ職人)、弟子(技術見習い)がかかわった(乾宏巳『江戸の職人』吉川弘文館)。世界有数の消費都市・江戸は、こうして鎖国時代にも栄え続けたのである。

 分業による多彩な職業の発展は、「旅」によって開花することになる。地域ごとに開鎖したままではなく、人と物の交流が促進されて初めて貨幣経済は刺激され循環する。鎖国は、むしろ日本に地域間経済の活性化を促したとさえいいうるだろう。たとえば俳人が、西洋における吟遊詩人のような実質的な物乞いではなく、師として各地で歓迎されるような豊かさが中世以降の日本には根づいていたのであり、こうして江戸期に旅や交易の隆盛によって、牢固とした市場経済の基盤を形づくられる。西洋で団体旅行が発明されるのはトマス・クックにより1841年とされているけれど、鉄道利用という点で「世界初」だとはいえ、団体旅行、為替、案内、手続き代行などという点ではいずれも「江戸」が2世紀も先駆けている。

海外旅行過去最高

「徳川政権は、関ケ原の戦いに勝利すると直ちに、慶長6年(1601)に東海道に宿駅を指定して伝馬継ぎ送りをする宿駅制度を施行するとともに、その後も中山道ほかの五街道にも宿駅制度を設け、旅人の宿泊や人馬利用の便をはかった。歩いて渡れない大河には渡船を置き、渡守に扶持を与えて旅人の利用に供し、全国の街道には一里塚を設置した(中略)かくして、遠隔地の役所へ赴任したり、また公務で全国各地へ向かう幕府役人や、また江戸との参動交代を行う大名も苦難を味わずに旅することができるようになった。農・町人も(中略)全国各地へ安心して旅立つことが可能になったのである」(深井甚三『江戸の旅人たち』吉川弘文館)。

 旅人の往来によって、宿場町が栄え、さらに分業が進み、情報と商品と貨幣が流通し、貨幣経済が潤滑に回転していった。

 つい先ごろ、国内旅行人気が回復(JTBによる。1月18日発表)し、出国者数も過去最高の1670万人(法務省入国管理局による同日発表)という、世界的には異常値を見るにつけ、日本は世界に先駆けた「旅行大国」であり続けてきたのだと、改めて思うのである。

1996.1.24


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