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夫とセックスレスなのですが......

Q:セックスレスについてご意見をいただきたいです。10年前に結婚した時か
ら私(妻)は正社員、夫は派遣社員で、私の方が収入が多かったのですが、そ
の後、2年前に夫が失業し、以来、夫は主夫をしております。夫は家事が得意
で、私も有り難く思っているのですが、夫の方は私に対して申し訳ない気持ち
を持っているようです。そのせいもあってか、失業してからずっとセックスレ
スになってしまいました。

 それについて特に二人で話し合いもしないまま、ずるずる時間が過ぎていき
ます。今も夫のことが好きですし、セックスレスを何とかしたいと切実に思っ
ているのですが、どうしたらよいのか分かりません。何かアドバイスがいただ
ければ幸いです。


A:セックスレス夫婦に関しては、日本の厚労省でも欧米でも定義がなされ、
日本では「夫婦の合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1カ月以
上もない」状態をいうことになっています。日本性科学会が為した定義です
(私が敢えて内容を少し変えました)。
 後述するように、性とはとても微妙なものですし(例えば刑法のなかでも唯
一、合意がなければ凶悪犯罪の一つになり、合意があれば愛の形になる、とい
う両極端になるのはセックスだけです)、それ以上におそらく微妙かつ深刻に
考えるべきは「夫婦という在り方」と「夫婦の情愛サスティナビリティ(環境
の変化に適用しつつ良き関係を持続させること)」だと思います。

 そもそも、性科学会の定義を紹介いたしましたし、実は私も学会に所属だけ
しておりまして、みなマジメに科学として研究しようとして入るものの、やっ
ていることは科学的(検証可能性があることを科学的と呼びます=誰がやって
も、同じ条件下なら同じ結論になるという意味ですね)でも何でもなく、強い
て言えば文学であり、せいぜい心理学です。科学的たらんとすると、ほとんど
統計をとるしかなくなるのですよね。

 私の研究分野の一つに「精子」や「人工受精」があり、『それは違う!』
(文春文庫)に収録されている論文は、従来の精子研究がいかにインチキだっ
たかを完膚なきまでに証明したものでもあります。
 また自著で恐縮ながら、『愛は科学で解けるのか』(新潮OH!文庫)や『日
本につける薬』(実業之日本社)でも触れましたが、夫婦における性交回数の
各国比較というデータがあり、確かギリシアが142回で1位、日本はずっと下で
確か45回くらいだったかと思います。週刊誌は例外なく毎年これに飛びつき、
日本人はセックスをしない! 少子化の原因だ! と騒ぎたてます。しかし、
ギリシア人や25位くらいまで入るような国は、「ほかにやることないんかいッ」
と言ってあげたくなる、と私は本気で思います。
 年45回ということは、ほとんど週1です。立派なものではありませんか。20
歳から60歳までの統計ですよ(確か)。

 ところで、上記の国際的統計は自己申告ですから、見栄張り度も考慮に入れ
なければなりますまい。日本人は、「週1なら52回か、じゃあ45回」みたいな
発想をしがちで、イタリア人ときたら、ナンボでも大げさに見栄を張って実際
より大きな数を答えるでしょう。
 これが科学と言えますでしょうかねえ。断じて否、です。多少は私の偏見も
入っているとはいえ、142回はねえだろ。

 さて、冒頭で述べた定義は、本当はこうです。「カップルの合意した性交あ
るいはセクシュアル・コンタクトが1カ月以上もなく、その後も長期にわたる
ことが予想される場合」。まず、私が大いに異論があるのは、この定義は極端
なフェミニストと事実婚原理主義者(事実婚は構わないけれど、原理主義は大
いに困る)に考慮したものであるため、こうなっているわけです。つまり、
「カップル」は「夫婦」とすべきなのに、敢えて反論を避けて「カップル」と
してしまった。

 実際のところ、「セックスレスの恋人」というのは、ありうるのでしょうか。
 私は、強いて言えば、それはもはや友人とか惰性と呼ぶべきものであると思
うのです。
「恋(こひ)」とは平安時代、性的関係そのものを指す言葉でした。対するに
「愛」とは、親子関係にのみ適用される言葉だった。ですから、「愛している」
という言葉に今でも不自然さがつきまとうように感じるのは当然なのです。
I love you.は大概、好き、と訳すべきと思います。
 ご質問のなかに「今も夫のことが好きですし、セックスレスを何とかしたい
と切実に思っている」とあり、それだけで立ってしまいそうです――失礼、間
違えました、それだけで感銘を受けてしまいますが、ともかく日本人の場合は
「好き」が長く続いている(サスティナブルな)夫婦は、本当に理想的だと思
います。逆に、男が「愛している」と答えるときほど、空虚な瞬間はありませ
ん。アングロサクソンじゃねえんだから。

 セックスレスが問題になる恋人は、深刻たりうるのかもしれません。でも
「別れれば済む」とか、「それはそれでいいと思えば結構」と考えてしまえば
良い。セックスレスが問題になるのは、やはり夫婦関係においてなのです。
 換言すれば、セックスの問題として考える前に、どういう夫婦でありたいの
か、という問題こそ肝要なのだと思います。

 実は、今年の末頃を目指して『夫婦という関係』というタイトルの本を出す
かもしれず、準備を進めています。
 だから、どうしても長くなってしまうので、結論を急ぎますね。

 ご主人が失業なさったことと、もともと契約社員だったことは、比較的因果
関係があると思います。そして、妻より収入が少ないばかりか、主体的選択と
してではなく、失業の結果として主夫になった場合、「自信」の低下を非常に
招きやすいため、そのことと「セックスレス」は無関係とは言えないでしょう。
たぶん、です。証明できませんから。

 失業していなくても、58歳の既婚男性の42%がインポテンツという結果が発
表されたことがあります(ちょっと統計の取り方に問題はあるものでしたが)。
なぜ覚えているかというと、足して100%だなと思ったからです。日本の夫婦
の32%がセックスレスだと、日本性科学会の研究会は指摘しています。そうい
うキミたちはどうなんだい、と訊いてやってください。

 さてさて、女性とはかなり異なって、男性は「頭」でセックスをしてしまい
ます。若いころはそうでもない(イクことばかり優先しがち)けれど、慣れて
くると、「我慢するほうが気持ち良い」となるのは、とても良いことだと思い
ます(既婚者や、かっこいいカレセンがモテるのもそのことと無関係ではない
でしょう)。
 我慢しないセックスなど、オナニーとほとんど同じです。コミュニケーショ
ンとしての性交渉の場合、少なくとも男は、加齢(熟達)とともに、(1)我
慢していることが快感になり、(2)相手が気持ち良くなってくれることに
よって、自分も快感を得ることを学び、(3)しかしながら、どうしても最後
にフィニッシュに至らないと「終わる」ことができない。
 レズビアンの場合の終わり方は、とても難しいでしょう。「ああ疲れた」と
言うわけにもいかず、「イク」というFinがないので。

 話を戻しますと、若いころの男は99%「イク」ことを目標とし、たぶん80%
の男は「自分はセックスが上手なほうだ」と思っているでしょう。反論させて
いただきますと、そういう悪口(自分ではうまいと思っている男が多い、とい
うような)を言う女性も、実はたいして、うまくなかったりします。

 すみません。話が逸れていますか。

 ともかく、男は「頭」でセックスをします。雑念が入ると、立たなかったり、
途中で折れる状態(いわゆる中折れ。俺、なに言ってるんだろう)になったり、
最初からあきらめてしまったり、というのはある意味当然だと思ってください。
 雑念というのは、触れあっているときや、いい感じのときは問題ない(たい
ていは気にならない)のに、交尾にさしかかったときに雑念(「ああ、妻は俺
を気遣ってくれているのだなあ」とか)を抱くと、エレクトしなくなる可能性
が高い。頭でセックスをする生き物であるというのは、そのような意味を含ん
でいます。

 そこで、そろそろ結論へ。

(1)やはり、率直にご夫婦で、仕事のこと、好きであること、ありがたいと
思っていること、を話すべきだと思います。そして、ご主人の本音も聞いてあ
げてください。ただし、身体も一緒になりたいという思いについては、突然話
さないほうがいいと思います。ED(勃起障害)の専門家の中には、夫婦の話し
合いを勧める人が少なからずいますが、あまりにリスキーです。男も女も「そ
の気になる」ことが先ですし、セックスについて話し合った結果、夫婦の関係
性まで壊す危険性をきわめて大きく秘めています。
 沽券(こけん)にかかわる問題でもあるので、「セックスのこと」は改まっ
て話し合わずに、セクシュアルなコンタクト(実際には両方とも丸裸で、から
みあいはするけれども、交尾はしないと決めて)にまでもっていき、後ろから
ゆるく抱きつきながらそんな話をするのがいいでしょう。その気にさせるスキ
ンシップ、術(すべ)を会得してください。だんだんアダム徳永先生みたく
なってきたよ〜。

(2)ついでに言ってしまいますが、奥様は、アダム徳永『出世する男はなぜ
セックスが上手いのか?』(幻冬舎新書)または『スローセックス実践入門』
(講談社+α新書)をぜひお読みください。ご主人には見せないほうがいいと
思います。逆に言えば、「出世しない男は......」ということにもなりますので。
しかし、そのような本ではありません。
 挿入原理主義を強く戒めた本であり、著者はスローセックスの第一人者でも
あります。彼の教室に行くという手もありますが、私は行ったことがないし、
かなり「いとをかし」な世界なので、お二人が合意に達したら行ってみてくだ
さい。3カ月待ちらしいですが。実践で教えてくれるのですって。私は助手を
務めたいです。

(3)アダム先生のところへ行く前に、ペルーに伝わる秘薬(日本ではサプリ
メント)「マカ」をお試しください。お薦めは、小林製薬の「マカEX」です。
問題は、本人がそれを進んで飲もうとするかどうか(どうそれを薦めるか)か
もしれませんが、とにかく小林製薬の「マカEX」(笑)。マカにアシュワガン
ダエキスが豊富に入っていますから、かなり効くはずです。
 それ以外の「マカ」は、スーパーや薬局で売っていますが、サプリのシリー
ズとして売っているものはあまり効かないようですし、そうでないものは真っ
赤な字で「ここで一発」とか「突撃一番」みたいな、とても堂々と買えるネー
ミングではなく、おそろしくて手が出ません。

 これでもダメなら、やり方があります。
 とてもここで書くわけにはいかないので、どうしてもお訊きになりたい場合
は、「あれは何をすればいいのですか」とコッソリお訊ねください。とりあえ
ず、(1)〜(3)のうち、できることをやってみてからということで。

「ガッキィファイター」2010年04月24日号に掲載

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