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第18回 「あの子を探して」

 お金をかけなくても、これだけのものが撮れる、という見本のような映画で
す。ゴージャスなドラマや映画を見慣れた目には、出演者が素人ばかりで、ス
トーリーも、よく考えれば「もっと早く進め」というふうに思わないでもない
ですが、このゆったりとした時間の流れこそ中国の田舎なのだなあ、とも感じ
ます。
 私の小さいころも、そうでした。


 冒頭、中国の山のなかにある小学校の中年教諭が、老母の介護のため教室を
しばらく去ることになります。代用教員として連れてこられた主人公のウェイ
は、中学校も出ておらず、しかもまだ13歳の少女です。


 村にはほとんどお金がなく、その中年教諭ももう何カ月もお給料をもらって
いません。子どもたちも、家の仕事を手伝わされたり出稼ぎに行ったりするた
め、次第に学校へ来なくなっていました。
 学校に「寄宿」している子どもたちもいるのですが、寄宿舎があるわけでも
なく、たった一つの教室やその隣にある執務室に全員で寝るのです。
 23歳ではなく、13歳。児童たちと、さほど年齢もかわりません。


 なぜウェイは、そんな仕事を引き受けたのか。1カ月分の給料50元が欲し
かったからです。
 でも、「教える」技量などウェイにはありません。しかも、唯一の目当てた
る50元も、村長の態度からしてもらえるかどうか、おぼつかない。老母のもと
に介護に行く中年教諭は、ウェイに提案します。自分が戻ってくるまで子ども
たちが一人も学校を辞めなかったら、村から出る50元のほかに、ポケットマ
ネーから10元をご褒美としてあげよう。


 そこで13歳のウェイが考えたことは、とても単純なことでした。「教える」
ことではなく、「誰一人として学校を辞めさせない」ための徹底監視に走りま
す。
 かわいいですよね。
 そんなある日、彼女を一番てこずらせていた腕白坊主のチャンが、学校を休
みます。これでは60元がもらえません。自宅を訪問してみると、チャンは町に
出稼ぎに行ったといいます。貧しい家では、数千元もの借金があり、その利子
のために売られたようです。


 彼女は、町にチャンを探しに行きます。片道のバス代だけで20元余りだった
りするので、どうにもこうにも計算(彼女が「あの子を探しに」行くコスト)
が合わないわけですが、それはともかくバス代を捻出するため幼い児童全員を
アルバイトに駆り出したり、バス代を計算するために、初めて授業らしい授業
を行なったり、かなり楽しい展開です。
 全員でコーラを飲むシーンも、日本の昭和20年代を彷彿(ほうふつ)とさせ
てくれます。


 こうしてともかく、ウェイはチャンを探しに行きます。ところが結局、お金
が足りずにバスから降ろされて、彼女は歩いて街を目指すのでした。
 田舎者が、都会に出たときの感じが、よく出ています。都会の時間より彼女
の時間のほうがゆったり流れるので、そのギャップが、私のような田舎者には
ぐっときてしまいがちになるのでしょう。生粋の都会人には、飽き足りないか
もしれません。


 13歳のウェイが、都会で迷子になった11歳のやんちゃ坊主をどうやって探し
出すか。それは見てのお楽しみです。

                   「ガッキィファイター」2007年05月18日号に掲載

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