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ムーア監督「シッコSiCKO」のウソ  最後の社会主義国キューバで見たもの(7)

 

「テロより怖い、医療制度」というコピーつきで日本にも上陸した、マイケ
ル・ムーア監督の新作「シッコSiCKO」は、アメリカの医療制度をコキおろした
ついでに、理想的な医療制度はすでに存在する、という触れ込みで何とキュー
バを絶賛しています。


 しかし、本当に「無料」が優れた制度なのかどうか、そういう制度が本当に
実在するのかどうか、「無料」である代わりに何の治療も施されないのではな
いか、という点の検証くらいはしてもらわないと困ります。


 日本の医療制度にも幾多の欠点はありますが、まがりなりにも国民皆保険が
維持され、しかも、救急車で運ばれた正真正銘の患者や怪我人が低所得ゆえに
治療を拒否されることもありません。
 これは、世界的にも大いに評価されるべきことです。


 キューバに関してのムーア監督の態度は、残念ながら作家の故・小田実(ま
こと)氏にそっくりだと思いました。小田さんは、北朝鮮当局にコロっと騙さ
れて、1970年代の後半になってもこう書いていました。


《彼らのくらしには私たち日本人のくらしにはないものがあって、それは、た
とえば、私たちのなけなしのにくらべたら完全ということばを使っていいほど
の社会保障だが、おかげで、彼らのくらしのなかでは、老後の心配がない、病
気になったらどうしようという不安がない。》(小田実『私と朝鮮』筑摩書房、
1977年刊)


 北朝鮮では、国家の威信をかけて観光客を団体で連れまわすコースがあり、
その一つが平壌(ピョンヤン)市内の産院です。
 私も連れて行かれたことがあります。
 無料で、清潔で、なかなか好感のもてる(もてすぎる)病院でした。
 が、それ以外にまともな病院は、金王朝の最高幹部用の閉鎖病棟を除いて一
つも存在しないのです。


 北朝鮮とキューバは、医療に関して言えば、確かに同じではありません。北
朝鮮の自慢は「たった一つの産院」しかありませんが、キューバは整形外科医
療を外貨獲得の最有力手段に位置づけてきました。
 ホテルと同様、もっぱら外国人相手であるという点に注意してください。
 一般国民が、豊かな医療を受けられている、という事実はありません。
 

 ハバナ市内を散歩がてら、私たちはアポなしで、一般国民が利用する総合病
院に立ち寄ってみました。
 そこで目にしたものは、アメリカに爆撃され尽くしたイラクの病院より「何
もない」惨状でした。

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