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「皆が持っているものは、ゼロと同じ」by色川武大

 色川武大(いろかわたけひろ/ぶだい)さんが書いた『うらおもて人生録』(新潮文庫)は、若者に向けた、文字どおり人生論ではあるものの、最近一時流行し今は落ち目のビジネス書が手を変え品を変え言い募る得体の知れぬ不可思議な成功術ではなく、元非行少年による劣等生に向けた人生の指南書である。

 したがって、この本には本音のみが語られており、針小棒大や偽善とは無縁の書だ。

 今は亡き色川さんは、『離婚』(直木賞)、『黒い布』(中央公論新人賞)、『怪しい来客簿』(泉鏡花文学賞)、『百』(川端康成文学賞)、『狂人日記』(読売文学賞)などで知られるが、別のペンネームである阿佐田哲也の名で『麻雀放浪記』『ドサ健ばくち地獄』『牌の魔術師』などを出版した。阿佐田哲也も、いい感じのペンネームだけれども、なぜギャンブルものを多くその名で書いているか。ご存じの方はご存知のように、麻雀やろうぜ! やってたら朝だ! 徹夜だ! というようなことからアサダテツヤ。

 戦後の焼け野原で小中学校に通うこともなく、学校をさぼっては半分やくざな大人たちの博打場に入りびたり、とびっきりの非行少年ではあるものの、まじめな少年たちが学校で退屈な授業を受けているとき、寸暇を惜しんで博打という人生の縮図や修羅場、そして戦後復興の大人たちの生きざまを具(つぶさ)に観察し続けるという意味で、実に深淵なる人生の観察者でもあった。

 本書の冒頭は、こう始まる。

《さて、どんなことからしゃべり始めようか。
俺、無学だからね。それから、特にはっきりと、他人のために役立つことをこれまでしたおぼえもないしね。それでも五十すぎで、くだらん男なんだよ。俺なんかの商売は、しょっちゅう活字に名前が出るものだから、時に偉そうに見えたりすることもあるかもしれないけど、俺なんかそんなんじゃないんだ。》(P11)

 近ごろ、世界中で大規模な戦争がなくなり、アメリカとキューバが半世紀以上を経て国交を結ぶ手はずが整い、イスラエルとパレスチナすら、かつてのような激しい戦闘は消え和平の兆しも見えつつある。
 ほとんど日本では話題にものぼらないことだが、数年以内には中国と台湾も、奇跡的な和解を果たすだろう。
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